ブランディングとは?メリットや手法・戦略などブランディングの基礎を解説
よく聞くブランディングって何ですか?なぜブランディングが必要なのですか?メリットや手法を知りたいです。
では実際にブランディングに携わる私が、現場での肌感とともにお伝えしますね。
まずはブランディングの基本を押さえておきましょう。ここでは、ブランディングのルーツをたどりながら、手法やメリットなどの基礎知識をご紹介します。
ブランディングとは何か。またブランドとは。
これから新規事業を立ち上げようとしたとき、またターゲットを変えてリニューアルしようとしたタイミングでブランディング戦略は必須となります。
ブランドとは
語源を辿れば「ブランド=焼印」です。昔、牛飼いさんが自分の牛が判別できるように牛のお尻あたりに焼印を押したことがブランドの起源なのだとか。
つまり、同じものがたくさんあっても、名前を聞けば、パッと見れば、どこのものかがわかる。それがブランドです。ただ、勘違いしないで欲しいのはマークを作ればいいということではありません。重要なのはマークやネーミングの裏にある、“いろんな印象”がブランドには宿っているということです。
いろんな印象とは、品質や価格や人物像などブランドを取り巻くすべてのもの。
例えば「シャネル」というブランドで、あなたは何をイメージするでしょうか。
あのロゴ(CCマーク)を思い浮かべる人もいるでしょうし、高価なバッグや、ラグジュアリーな空間と接客、キルティングやツイードの素材、パールなどのアイコニックなものを思い出したり、映画で見たガブリエルシャネルの顔や物語を思い出す人もいるかもしれません。これが「いろんな印象」の内訳です。
ブランド名を聞けば、瞬時に相手に伝わる良い印象を与えるもの。それがブランドです。
ちなみに、シャネルやエルメスといった歴史のあるハイブランドは、長い歳月とともに、信頼と実績でブランドとして成長しています。
ブランドになることは、お客様の信頼や憧れを瞬時に獲得できるため、大きなメリットを享受できるのです。
ブランディングとは
そして、ブランディングとは、ブランドになるためにさまざまな観点から戦略的に落とし込んでいく作業のことを言います。
ブランド名は?ロゴマークは?タグラインは?などをひとつずつ丁寧に考え、さまざまな要素に一貫性を持たせながら、形作っていきます。
ロゴマークを変えるだけでは、ブランディングにはなりません。ブランディングの範囲は広く、商品やサービスの内容、パッケージ、外観デザイン、内装、HP、広告など、さまざまな点から考察します。
先ほど書いたシャネルやエルメスは長い時間をかけてブランドへと成長していきました。
ブランディングは、その時間を短縮し、短期間で信頼や憧れを抱かせるように戦略的に行うことです。
なぜブランディングが必要か。メリットは?具体例3選
ブランディングがなぜ必要か。その答えは、信頼や憧れを持ってくれるファンをつくることができるからと言えます。
ファンになってくれることで、お客様と強力な信頼関係を築くことができ、他社と比較したときに圧倒的に強い存在感を放つのです。
例えばこんなシーンでメリットを感じられるでしょう。
セールスせずとも商品が売れる
お客様はあなたのブランドに憧れをもっているし、信頼しています。だから、セールスしなくても、相手に“買いたい”という気持ちを芽生えさせることができるのです。
あなたはこんな経験ないですか?
「ほしいとずっと憧れていたブランドのバッグ、結構高いけど、ご褒美にして誕生日に買おう」
別にブランド側から「誕生日にどうですか?」と営業されたわけじゃないのに、「素敵な人が持っていていいなと思った」とか「デザイナーの考えに共感した」とか「工房の職人の姿にグッときた」などいろんな視点でブランドに対していい感情を持ったという経験。
このようにブランドになることで、売り込まなくても買ってくれるようになります。
価格競争に巻き込まれない
その商品がブランドになっていない場合、人はスペックで比較します。
値段、大きさ、素材、量、時間、期間などなど。形あるものに限らず、サービスでも同じ。
より良い方、より多い方、より大きい方、より安い方、より具体的な方…。とにかく、比較しまくります。結果、ちょうどいい塩梅のものを見つけて購入します。
ここには、損得の感情が入っているんです。
同じようなものなら、ちょっとでも安い方がいいし、ちょっとでも大きい方がいい。比較して、得な方を選びたくなるんですよね。それは当たり前の感情です。
でも、ブランドになっていたら(=そのブランドを認知して背景を理解していたら)スペックよりも憧れの感情が先行します。安いからとか量が多いからという理由ではなく、そのブランドだから買うということが決め手になるのです。
リクルート活動に優位
ブランディングは、ものやサービスだけでなく、企業のブランディング(コーポレートブランディング)にも効果を発揮します。
私は2000年卒の就職超氷河期の世代なので、就職先を選べませんでしたが、今のように売り手市場になると、就活生にとって魅力ある企業でなければ就職先に選んでもらえません。
私は2009年からのべ500社以上の採用に関するサイトのライティングを行ってきました。そのうえで、企業ブランディングの重要性を強く感じています。
そして、就活の傾向としていえるのはコレ。最近の学生さんは、給料の多い会社より、魅力ある会社を選ぶ傾向にあります。
その魅力とは、社会貢献だったり、かっこいいオフィスだったり、自己成長できるかだったりします。魅力とひとくちに言ってもそれは就活生の視点の数だけあります。
いずれにせよ、「あの企業で働いてみたい」という憧れを持ってもらうにもブランディングは必須です。
たくさんの就活生がエントリーしてくれるといい人材の獲得にもつながります。また、企業ブランドに共感して入社した社員はスタートした段階で高い愛社精神をもってくれる傾向にあります。そのため、離職率も低下し、結果的に企業の大切な人財として活躍してくれることでしょう。そう考えると企業がブランディングを行うメリットは結構大きいのです。
ブランディングとマーケティングの違い
コピーライターの仕事をしているとマーケティングに近いところにも踏み込むことがあります。みなさんはブランディングとマーケティングの違い、分かりますか?
マーケティングとは
マーケティングで特徴的なのは売り手側の視点となる4つのPを検証し、実行していくことです。
マーケティングの4Pとは
- プロダクト(製品)…特徴・サービスなど
- プライス(価格)…値段
- プロモーション…宣伝・PR・セールスなど
- プレイス(流通)…売る場所
例えば、なかなか売れない化粧水があるとします。マーケティングの視点から考えるなら、原料や製法、品質の見直しを行い、価格は妥当か、売る場所についても検証を行います。
検証の結果、新しい原料をプラスして価格を見直し、販売する場所を変えて売れるものにしていく、これがマーケティング戦略です。時には割引を適用したり、ノベルティをつけるなどして販売する、販促活動のことを指します。
ブランディングとの違いは
先ほどの化粧品の例をブランディングで実践すると
化粧品のターゲットを考え、コンセプトを決めて、各工程に落とし込んでいくというやり方になります。具体的には、商品名、パッケージデザイン、タグライン、ロゴマーク、キャッチコピー、CM、ウェブサイト、カタログなどの制作等に関わります。
ふたつの違いは目的にあります。ブランディングの目的は「商品の価値を浸透させてファンを作っていくこと」。一方マーケティングの目的は「売れるようにしていくこと」。
打ち上げ花火のように瞬間的な売り上げを立てることだけを目的にするならば、マーケティング施策を行うほうが早いかもしれません。(例えば、値段を安くする、目立つ場所で販売する、販促イベントを行うなど)
かといって、ブランディングが売ることを無視しているかというとそうではありません。当然、売れてもらわないといけません。ただ、ブランドを浸透させながらファンを作り、売れるようにしていくには時間がかかるのです。
だから私はこう考えます。ブランディングでしっかりファンを作り唯一無二の存在になっておくことで、他社との価格競争に巻き込まれることなく、選ばれるようになります。だからまずはブランディングを行ってから、マーケティングを意識することが大切だと。
展示会に出るにもブランディングを行ってからのほうが、トータルコーディネートができますよね。そのほうが魅力が伝わると思いませんか?
そして、ブランディングとマーケティングの相乗効果はとても大きなものになります。どちらも大切なものです。
ときに、私はお客様にマーケティング的な視点から提案を行うこともあります。
セルフブランディングについて
最近ではセルフブランディングという言葉もよく聞くようになりました。
セルフブランディングとは、ブランディングの対象が企業や商品ではなく、自分自身であるということです。
SNSを利用して商品やサービスを販売する人が増えてきたことから、やはりみなさん他社(者)との差別化のためにブランディングを行っています。
「誰から買うか」という理由づけになることから、セルフブランディングは一気に注目が集まっているのです。
セルフブランディングって何?と思った方へ。 参考:セルフブランディングとは
ブランディングを成功に導く4つのポイント
マーケティングリサーチで気づきを集める
自社を知り、他社を知り、お客様をリサーチしていくマーケティングリサーチ。
競合は何か、自社の強みは何か、お客様が求めているものは何かをリサーチする期間です。
ブランディングのファーストステップでもあるマーケティングリサーチは、その後のステップに続く基礎となるため、しっかりと調査することが大切です。
そして、リサーチが仕事にならないよう気をつけましょう。
リサーチを通してたくさんの気づきをストックしておくようにしましょう。
具体的な方法はこちらで紹介しています。参考:マーケティングリサーチのやり方
勝てるポジションを見つける
マーケティングリサーチをすると、自社の強みと市場の状況がわかるので、どこにポジショニングするのがいいかが明確になります。
自社の強みだけで設定してしまうと、他社とバッティングしてしまうことがあります。
だからといって、信念を曲げろと言っているのではありません。
他社と比較して、差別化しつつ、自社の強みを研ぎ澄まし、付加していくことでポジションを決めます。
また、このポジションメイクは、自分が何者かを理解し、一貫した視点を持つのに役立ちます。
コンセプトを明確にする
ブランディングの要ともいえる、コンセプト。
マーケティングリサーチで得た情報をもとに、ターゲットを決めて、コンセプトを開発します。
ターゲットにとって魅力的に映る状態を言語化していくのがコンセプト開発。コンセプトを聞けばイメージが湧く、意思統一が図れる、わかりやすい言葉で表現します。
具体的な方法はこちらで紹介しています。参考:コンセプト開発とは
コンセプトに従い、各コンテンツに落とし込む
各コンテンツとは、お客様との接点がある場所のこと。
お客様の目に触れたり、読んだり、体験したり、味わったりできるポイントです。
そのポイントのひとつひとつがコンセプトに通じていることが大切。
各コンテンツは担当者の好き嫌いや、なんとなくといった雰囲気で決めてはいけません。
コンセプトに従ってコンテンツを決定していくので、なぜそれを選択したのか、理由を述べられるようになります。
具体的な方法はこちらで紹介しています。参考:ブランディング実行
まとめ ブランディングは戦略的に構築していくもの
たくさんのものやサービスで溢れる今、「ここなら安心」とか「ここのがいい!」と選ばれる存在になるのがブランド。
そして、そのブランドになるための戦略こそ、ブランディングです。
ブランディングで関わる範囲は広く、お客様に印象を与えるものすべてがポイントになります。
パッケージデザインやロゴマークといったコンテンツはもちろん、接客サービスの仕方などもブランドを印象付けるコンテンツです。
これらが一貫していることで、ブランドの訴求力は高まり、強いブランドへと成長していくのです。
最後にブランディングのメリットを発信側と受けて側でまとめてみました。
ブランディング発信(企業)側のメリット例
※以下、「ファンがいるから〜できる」と考えましょう。
- 商品が売れるようになる
- 価格競争に巻き込まれにくい
- 求職者が増える
ブランディング受けて(お客様)側のメリット例
- お店を理解(信頼)しているので安心できる
- ブランドを認知しているので選ぶ時間(ロス)を無くせる
- 自分の会社に愛着や誇りを持つことができる
このように企業側のメリットはお客様側のメリットと相互関係にあります。ブランディングは、企業側にもお客様側にもいい波及効果のあるものです。