私のブランド体験「金子眼鏡店」
ブランディングに携わる私が、実際に体験したブランドの備忘録。
素敵なブランドをご紹介します。第一回目は金子眼鏡店です。
デザインと品質が信頼できるものか
視力がいいことだけが自慢だったわたし。
でも40半ばにして老眼?近視?なんだか目が悪くなってきた気がする・・・。
というわけで、憧れのメガネを作ることにした。
(視力のいい私はメガネに憧れダテメガネをかけていたこともあるのだ)
どこで作ろうか考えた結果。
前に弟がつけていた素敵なメガネが「カネコガンキョウテン」と聞いていたので、私も作るならそこがいいと心は決まっていた。
お店の名前は知っていたし、漢字で書かれたあのロゴもなんとなく記憶にあった。
それでも、実物を見るまではピンと来なかったと思う。あのとき、弟のメガネを実際に見て、「素敵!」と思ったことは大きなきっかけになったように思う。
やはり、品物のデザイン性や品質がいいことはブランドになるために最低限必要なことだと実感する。
店舗の雰囲気と接客もブランドを構成する要素
最寄りの店舗はショッピングモールのなかだった。
賑わうショッピングモールのなかで、落ち着いた雰囲気を放つ店構え。
店内には洒落たフレームが並んでいる。
値段をみると、安くはない。
チラリと値札を見ては「高いけど、いいものだから当然だよな!」と納得する。
店員さんに会釈をすると、店員さんも別のお客さまの対応をしながら、私に一声かけてスマートな対応をしてくれた。
接客を待ちながら、店頭のフレームを見ていると私の番になった。
店員さんに要望を伝える。
「視力が悪くなった気がして初めてのメガネを作りに来ました。何をどう選べばいいかわからないので教えてください」。そういうと、「では、まずは視力の検査から行いましょうか」とお店の奥の検査スペースに誘導された。ひとつひとつ丁寧に説明しながら進めてくれるので、自分の視力がどこまで落ちていて、どういう状況なのかがよくわかる。
仮のメガネでレンズを変えながら、見え方をヒアリングしてくれ、いまの私にぴったりのレンズを探してくれた。
まず、店構え。カジュアルな眼鏡店はフルオープンにしているケースが多いが、金子眼鏡店は入口を狭くし、両サイドをガラス張り(下半分は木のモールディング?だった)にしていた。誰でも気軽にどうぞ、という感じではなく、入るのに少し気合いが入る。そこでふるいにかけてるのかな。
また、店員さんの知識とホスピタリティは素晴らしかった!!
ここでだいぶ心を鷲掴みにされた。
「ほしい」という感情が高まってくる
私の接客を待つ間、一緒に行っていた主人もメガネを物色し始めた。
彼は老眼鏡を持っている。しかもふたつも。なのに、店員さんにこう言ったのだ。
「いちいちメガネをかけたり外したりが面倒なので遠近両用にしようかと思って」。
今、ふたつも持っているのに?!
と私の心の声が漏れそうになったけど、結構その気になっていたので見守ることにした。
彼も検査を経てフレームを選び始める。気に入るのを見つけて満足そう。
ふたりともフレームが決まり、レンズが決まったところでお会計、と思ったが違った。
最後に、レンズのグレードを決めるのだ。
「ここからここまでが既成のレンズ。ここからここがオーダーレンズです」と。
そのグレードは10段階くらいあったように思う。
そして、彼はこう言った。
「一番ええやつにしとかないかんやろ!」。
私「・・・・・・」。(いや、なんなん、そのノリノリな感じ)
時間をおいて、私は言った。
「合わなかったらもったいないんやから、そこまでいいのじゃなくていいやん」と。
店員さんの説明が始まってみると、一番いいレンズの値段は20万円ほどだったと思う。
結局彼はその値段にひるみ(笑)、上から二番目のランクのレンズにした。
それでも10万円は超えている。
私はオーダーレンズの一番下のランクのやつにした。
これがブランドマジックなのかと思う。
主人はもともと買う気がなかったのに、買うことになったし、さらにはなかでもグレードのいいものを買いたいという気持ちになっていた。
私も初めてのメガネだし、ずっと付けるわけでなく、会議や講演会のときに少し離れたモニターが見やすくなればいい、と思っていたのに、なぜかオーダーレンズを選んだ。勧められたわけでは決してない。自ら高額な方を選んだ。
接客や雰囲気に信頼が宿っていて、「ここならいいものに違いない、ここで買いたい」という気持ちになったのだと思う。
一点、残念なのは、そこまでのブランド価値のあるところで、主人が最後に「安くはならんの?」と聞いたこと。(笑)いや、だったらそんなええの買わんでええやん、と心の中で恥ずかしく思いながら聞いたのは内緒の話。
お客さまと接する場所に感動がある
商品は後日郵送で送ってもらうことにした。
10日ほど待つと商品が届いた。
金子眼鏡店のロゴ入りの袋にふたつの箱が入っていた。
厳重に包まれており、箱→桐箱→メガネケース→メガネの順で現れた。
そして、説明書とともにメッセージが入っていた。
私にも、主人にも、それぞれに当てられたメッセージがあった。
直筆のその文字を見ながら、あれこれとフレームを選んだり、視力を検査してもらった日のことを思い出した。
いいメガネを買えたことに満足していたけれど、店員さんの豊富な知識や接客の素晴らしさもブランドの価値となっていたし、空間も魅力だったと思う。
商品、店内、接客、知識、手紙・・・。
ブランドを構成する要素はたくさんあることを改めて感じた。
金子眼鏡店は、商品の品質と接客(知識とホスピタリティ)がブランドを支えていると感じた。
高いのに、また買うなら金子眼鏡店に行きたいと思う。
いいブランド体験だった。